丸鍋は、小鍋にささがきゴボウを敷き、どじょうをのせ、割下を注いだ状態で運ばれてくる。
卓上で火にかけ、たっぷりのせたネギを乗せて、くつくつと沸く頃にはネギはしんなりとなった頃が食べ頃である。
ぬるん。
どじょうの肌が唇をなめる。
いまとなっては希少な天然どじょうは、骨が当たらず、噛んでいくと地味ながらもしぶというま味があって、豊富な栄養分を本能が受け止めるのか、次第に体が上気していく。
こいつを菊正の燗酒で受け止める。
天然ゆえにどじょうのサイズが大小あるのがいい。
昼下がり、一人カウンターに座り、境に設えた横長暖簾越しに、年季の入ったご主人と女将さんのいいお顔を眺めながら、酒を飲む。
つまみに甘辛い江戸風「玉子焼き」や「あさりぬた」、その場で目打ちして開いた小さな土壌をタレをつけて焼いた「くりから焼」を食べながら、まずは一本。
そして鍋で一本。
いやいやどじょう汁を肴に、一日やるのもいいよねえ。