<神戸ディープシリーズ第二弾>
そこが店だとは、誰もわかるまい。
二階建ての小さな建物の一階には、木製看板があるが別の店名である。
その下に、「福」と記された小さい張り紙こそが、目印なのであった〈最後の写真)
二階に上がってドアを開けると玄関には、脱がれた靴が置かれている。
「いらっしゃいませ」。
玄関脇の厨房で料理されていた髭面の男性がにこやかに挨拶される。
火力の強い五徳が一つ置かれてはいるが、どう見ても普通の家庭用キッチンである。
ここで9人分の料理が次々血出されるのだろうか。
テーブルの上にはすでに料理が用意されていた。
中国風冷奴、辛くないよだれ鶏、漬物である。
それをつまんでいると、ご主人が大皿を運んできた。
「シュウヨウです。熱いうちにどうぞ」。
皮付き豚の焼肉であるが、焼き窯もないあの厨房でどうやってやったのか。
外側はカリッと中はしっとりと仕上がっている。
「ひよこ豆と羊挽肉の炒め煮です」
やられた。これはいけない。
羊の香りと豆の甘みが出会って、優しい味付けだが大至急ご飯が食べたくなる。
以下、背脂の甘い香りが効いた「豆苗と干し海老、背脂の炒め物.」。新鮮な海老の品のある甘味が伝わる「白灼蝦(バイジュオシャー)」、香ばしい「手羽先の揚げ物」、「麻婆豆腐」、醤油味の和えめん、香港風焼きそばの上にカイワレをどっさり乗せた「かいわれ焼きそば」と続く。
余ったご飯で炒飯を作りましょうかと言われたが。もうお腹いっぱい。
でもデザートの馬拉糕.は食べちゃうもんね。
お酒もいただき、これだけ料理をいただいて一人五千円。
神戸はほんま恐ろしい。
花隈「鷹楽園」にて