運ばれてきた瞬間に、蟹ミソの甘い香りが顔にかかった。
もうそれだけで、笑ってしまう。
まずスープを一口。蟹ミソを溶け込ませた液体は、味噌のコクとスープの滋味が渾然となって、充足のため息をつかす。
麺をすすれば、蟹の身やオレンジ色の卵がからまって、口に登ってくる。
蟹の身は拙い甘みながらも、なまめかしい味わいがする。
卵は旨味の塊りで、奥歯でいじいじと、いつまでも噛んでいたくなる。
できれば、蟹の餡をレンゲですくって口に運び、食べずにすかさず麺やスープをすすると、なお味が膨らんで、おいしい。
そしてこの滋養に富むスープを、頻繁に飲み進むと、第二段階が待っている。
汁が少なくなって、麺もふやけ、上海蟹つゆそばから上海蟹和えそばになるのであった。
そこでズズゥッと、音を立てて餡と啜り込む。これはたまりません。
こうして食べてもまだ餡は残る。
そこへご飯を少量入れて混ぜこむ。
ああ、幸せが体に満ちていく。
上海から到来した、冬だけの贅沢な幸せである。