91歳の女店主

食べ歩き ,

「67歳6月7日に開店したから、もう店は24年になるわ」。そう言ってオンマは、嬉しそうな顔をされた。
91歳の女店主は、シワも少なく、シミなく、眼鏡も必要なければ、頭髪は白髪一本もない。
「キムチと朝鮮人参のなせる効能ですね」と僕が生半可なことを言うと、オンマは言った。
「そうね。それも大事にね。でも前しか向かん。それが一番大事」。
常連客がしばらく来なくなったら「私どもに何か気に触ることがありましたでしょうか」と、メールする。
男女共まず大切なことは、腰が低いことという彼女は、名古屋から大阪に移り住み、ミラノでファッション関係の仕事についていたが、やがてここ福島に移住し、店を開いた。
「商売はお金だけじゃない。いろんな人といろんな話をさせてもらった。それが何よりの財産よ」という。
留学女子大生を一人雇い、地元の人に愛される韓国料理として、営々と商いを続けている。
小さな水餃子やキムチが入った焼き餃子、朝鮮人参天ぷら、ペチュキムチは、どれも手をかけた本物で、3軒目だというのに、スルスルと入る。
本物だけが持つ穏やかさによって、食べるほどに体が浄化させられているような感覚が積もっていく。
会いに来たくなる人が、また出来た。
福島に来たら、是非お母さんの作る韓国惣菜と笑顔に会いに立ち寄ってほしい。
福島韓国料理「峰」にて。