風呂吹き大根には、風呂吹き大根としての固さがなくてはいけない。
それは、大根の尊厳を生かしてやる硬さと言ってもいい。
大体において、世の風呂吹き大根は柔らかすぎる。
風呂吹き大根は,歯が大根の繊維を断ち切る喜びがなくてはいけない。
少しだけ顎に力を入れ、大根を噛んでいく。
味噌の味と量も大切で、濃過ぎても薄過ぎても,量が多過ぎても少な過ぎてもいけない。
そっと大根の味を引き立てる。
噛み締めれば、大根としての自尊心が歯の間で拳を上げる。
じわり。
冬を生き抜き、土中で肥えた甘さが、舌に、ゆっくり うと広がっていった。