夜は、白い花で始まった。
時として、白からピンクへと変貌を遂げる芙蓉の花は、四川省成都市の花なのだという。
白い小さな器に絞り出された花に、匙を入れる。
匙はふわりと吸い込まれて、花の下から薄黄色のムースが現れた。
それは花の白さを、より鮮やかに映す、雌しべなのか。
豆腐がやってきた。
豆腐の穏やかな甘みが、ゆっくりと広がっていく。
続いて、薄黄色の白花豆のムースから、優しい甘みがこぼれる。
豆と豆がともに響きあう。
その時微かに腊肉(豚の干し肉)の塩気がふっと刺す。
塩気が再び甘みに光を当て、心の中が温まる。
豆乳、白花豆、腊肉は、シェフが考えた精妙なバランスの上で、歌を歌う。
どれが突出してもいけない、ギリギリの関係である。
その際どい均整があるからこそ、優美が宿っている。
一皿目の前菜 「芙蓉」。