西麻布「一即多」

干物の反則。

食べ歩き ,

酒亭の親父が言うことにゃ
「焼き魚はなににします」とずらりと魚を取り出した。

「やや、あれはもしやして」
と、指差せば
「もしやしなくても、縞鯵です。縞鯵の干物です」。

「や、や。焼いて。お願いします」。
「落ち着いて」。

いんやあ、やはりそこはやんごとなき縞鯵。
脂ののりが上品で、舌に乗っては消えていく。

身もしっとり、あたしを食べてちょうだいと、唇や歯や舌にしなだれかかる。
なんとも優しい。当たりが柔らかい。

こいつを肴に小一時間、一人でじっくりぬる燗やりたいなぁ