岐阜「三和」

味噌カツ問題。

食べ歩き ,

岐阜の味噌カツ屋に、90歳くらいのおばあちゃんが1人入ってきた。
常連のようである。
「さあなにを食べようかねえ。カツ以外のもんはなにがある?」
「海老フライとかハンバーグとか」と店主。
「海老はいらん」。
「じゃあ、キャベツだけとか、ご飯と味噌汁とか」。
「おかず欲しいはねえ。歯が一本抜けて、よう肉が食え」。
「今日は椎茸あるで」。
裏メニューか。
「椎茸いらん。じゃあひれ味噌カツ定食ちょうだい」。
結局かつ食うんかい。
「かついらんのじゃなかったの?」
「いやカツ屋に来て、カツ食わんのじゃ、申し訳ないての」。
おばあちゃん店主の顔を見てゆう。
「あらあんた、昼から酒飲んでるかいな?」
「なんで?」
「顔が赤い」。
「赤いんは○○さんが目の前に座っとるからや」。
「ばあちゃんからこうてなにをいう」。
さて味噌カツである。
長い間味噌カツを理解できなかった。
なぜサクサクと揚がったカツに、味噌ダレをかけてしならせるのか?
なぜ甘ったるいのか?
ソースのような酸味がなくて、途中からダレてしまう。
などといった理由で敬遠してきた。
しかしこれでは、タベアルキストとして失格である。
とんかつと味噌カツは、別の料理なのだという認識を持たねばならないのである。
だから今日は虚心坦懐にして、向き合った。
これは「味噌ヅケカツ」である。
と思えば、実によろしい。
しかもこの店は、味噌ダレが甘すぎない。
山椒がかけてあって、甘さを引き締める。
試しにソースをちょいがけしてみた。
うまみは増すが、無理矢理感がある。
小皿にソースを入れて辛子を溶き、ちょいづけしてみた。
これはアリであら。
最後に残ったソースにご飯を入れて、混ぜ混ぜしてみた。
ハハハ。
長く名古屋と岐阜に移住して、地元色に染まったハヤシライスといった風情で、これもアリである。
岐阜「三和」にて