白トリュフは、暴力的である。
蠱惑的でもあるが、料理に使うと、その強烈な香りにすべてが持って行かれてしまう。
リゾット、つまり米が一番合うと思う話は書いたが、それでも白トリュフの香りが主役で、米は脇役である。
しかしこの料理はどうだろう。
白トリュフが主役になっていない。
白トリュフ、米、白子のそれぞれが圴一のバランスで自分の持ち味を奏でながら、共鳴し合っている。
「鮨の蔵」のオマージュだという白子は、五十度でじっくり加熱されて、噛んだ瞬間にとろんと舌にしなだれる。茹ででいるのに焼いたような香りが、流れ出た濃密な肢体と合わさって、色気を高める。
米は甘みをいっぱいに広げ、白子とトリュフを抱きかかえる。
この不思議な美しい均整を作り上げているのは、発酵白菜である。
白菜の熟れた酸味が、白トリュフや白子の個性をいなし、淀みなく流れゆく調べを生み出しているのだった。
憎い。
憎いまでの美学に酔わされた、宮木シェフによる自由が丘「mondo」の夜。