渋谷「ゆうじ」

ハバキがきた。

食べ歩き ,

ハバキがきた。
「ハバキのすき焼き」が来た。
まずは割り下に漬けられたハバキを、すき焼き鍋で焼く。
ハバキとは、大腿骨に巻きついている部位で、筋がたくさんあるので素人にはちと面倒な部位である。
だがこの筋なき綺麗な仕事は、さすがゆうじさん。
柔らかい赤身肉だから、焼きすぎてはいけない。
さっと焼く。
僕の好みは、片面に焦げが軽くつくくらいで、もう片面はもうさっとだけ。
それで手前右に見えるおろし醤油をたっぷりのせて頬張るのである。
赤身肉の鉄分が、口の中にどっと溢れ出し、その猛々しさを大根おろしがそっとなだめてくれる。
だから何枚でも食べられてしまうのだね。
肉を食べ終えたら豆苗である。
牛脂をすき焼き鍋に投入し、脂を出す。
そして豆苗をどっさり投入し、脂をからめるように炒めていく。
写真にあるように、上から牛脂で押さえるようにして、脂を満遍なく染み渡らせたら完成さ。
おいしい牛脂をまとって、くたっとなった豆苗がたまらない。
油と豆苗の相性は広く知られるところだけど、牛脂とのタッグにかなうものはない。
ただ問題は、次々と運ばれてくる肉を、網焼きでなくすき焼きをしているので、他のお客さんが、「あのテーブルはなんだろう」と、好奇心の塊でジロジロと見ることさ。
肩身狭いが、許してね。
「ゆうじ」にて。