「トンナレッリのチョチャーラ」吉川さんVOL2

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では実際に、「トンナレッリのチョチャーラ」を作っていきましょう。

チョチャリア地方風で、生ハムを使いますが、生ハムを使うこと自体がレストラン仕様なのです。普通の家庭では使いません。

それと、今回は乾燥のポルチーニを戻したものを切って、一緒にさっと炒めて、それに白ワインを加え、それから牛肉の煮込みソースを加えて。あとは、グリーンピースをいれます。

お店によってはニンニクの香りをつけるところもありますけれども、僕らはレストラン仕様なのであまり強くしません。今日は、使わないで作ります。

それと、レストラン仕様の仕上げには、パルミジャーノを使って食べやすくしています。こうしたレストラン仕様の作り方がある点からもわかるように、そんなに古い料理ではないんですね。

さあ、それでは作っていきましょう。まず生ハムを細切りにします。

昔のレシピでは玉ねぎを入れるんですけど、僕らはあまりやりません。玉葱を入れると、味が田舎っぽくなっちゃうんですね。

やはりレストラン使用ですので、都会的なすっきりした仕上がりにしたいのです。

次にフライパンにオリーブオイルを入れて、火にかけてすぐ、生ハムとポルチーニを炒め始めます。

ここで白ワインを振り入れます。乾燥ポルチーニの戻し汁をカップ2/1程入れ、煮込みソースを大匙2杯半ほど入れます。

これで、けっこう味の濃いソースができました。シンプルに、煮込みソースを入れない店もありますよ。

次にグリーンピースを加えます。向こうのグリーンピースは甘味が多いので、生ハムやソースの塩気とグリーンピースの甘味でバランスがとれるわけですね。でも日本の豆はあまり甘くない。その分調整します。

イタリア人はグリーンピースが好きでね。特にローマの人は大好き。

「アルフレッド」(吉川氏が働いていた人気リストランテ)は、付け合せ専用に契約していますから、むいた豆を、毎日五、六キロ使います。アルフレッド用に毎日むいているんですよ。それが大体毎日売り切れるんです。

アルフレッドは、七面鳥の胸肉の黄金焼きが有名で、それにはグリンピースが合うのでね。ローマでは定番で、魚の黄金焼きでもグリーンピースを添えます。

 

 

そして最後に胡椒。胡椒をしたところで火を止めます。

では、パスタを茹でましょう。食べ応えがあるのは、三ミリぐらいです。大盛りにしちゃいますよ(笑)。けっこうあるように見えますが、フレッシュだから、乾麺の重さとは若干違う。

パスタの生地は、セモリナ粉と卵です。生地自体は、卵入りの普通のパスタ生地と同じですが、多分、貧乏なころは水だけだったと思います。

このパスタを使って、ローマで今はやっているのは、カーチョ・エ・ペペ(チーズと黒胡椒だけのパスタ料理)です。

ローマでちょっと流行ると、すぐにイタリア全体にはやるんですね。昔より情報の流れが早いですから。

僕らの時代は、カーチョ・エ・ペペをメニューに載せるお店は、ほとんどなかったです。アーリオ・オーリオと同じで、あまりにも簡単に、手軽にできるものですから。わざわざ載せるまでもない料理なんです。

今はどこのレストランでもカーチョ・エ・ペペを出していますね。スパゲッティでやるときも太めだから使います。あれだけはね、ペコリーノ次第なんです。

シンプルな料理ですから、余計にチーズの質がものをいう。ですから、あまり塩気の強いペコリーノのときは、パルミジャーノと混ぜて使います。かといって、減らしたらおいしくないし、多いと塩辛いし。

さあここで、フライパンの方に茹で汁を少し入れます。

乾麺はそうでもないですが、手打ちのときはお皿を温めておかないといけません。そうでないと、あっというまにべとつくんです。

茹で上がりは、乾麺と同じように、中心が力を入れてつぶれるくらいの感じです。

こうしたセモリナの場合はまだいいですけれども、小麦が入るとどうしても粉っぽくなるので、ある程度火を通してあげないといけません。セモリナは少し生っぽくてもそんなに嫌味ではないのですが、小麦粉が入ると粉っぽい気がします。

茹で時間として五分ぐらいは必要です。割と生地が厚いですから、フェトチーネも最低五、六分は茹でます。

トンナレッリの生は、水を多めにしないとふきこぼれます。乾麺だと十五分くらいかかります。このあいだも講習会でやったら時間がなくて(笑)。

パスタを上げるタイミングでソースの鍋に再び火をつけて、パスタをソースでからめていきます。

最後にパルミジャーノをからめます。チーズの量ですか? 量は、振り入れて、チーズが香ってこないと駄目なんです。

というのは、特にこれはソースがたっぷりの料理ではないので、味付けのメインはチーズなんですね。

またソースの味がけっこう味が濃いので、ペコリーノだときつくなります。トマトソースを入れるときはペコリーノでもいいです。牛肉の煮込みの汁がないときは、トマトソースでやる場合もありますから。

またトマトソースの替わりに、パッサータ(トマト缶を裏ごしただけのもの)を加えることもあります。乾燥ポルチーニを入れれば割と味が濃くなるので。

似たものでは、 僕らがホテルで出していたフィウッジ風という料理があります。これはパンチェッタとキノコとグリーンピースで、トマトソースで、最後にパルミジャーノを絡めて食べる。

おいしいですよ。ローマ法王の保養地として有名だったフィウッジ(Fiuggi)という温泉の町があるんです。そこミネラルウォーターはイタリアのエビアンと昔からいわれて、天然水の中で一番良質といわれるミネラルウォーターです。

 

 

パスタの量は大盛りにしましたが、いかがですか? イタリアでは、今でもこのぐらいが普通です。

アルフレッドでは、お客さんの顔を見てグラムで注文が入ります。日本人のお客さんのときはいつも少なめです(笑)。

向こうではパスタ屋さんが町のどこにでもあるので、買いに行けばいろんな種類の生パスタがありますから、もう自分のところで作らくなってきています。リコッタのカネローニも巻いて売ってありますしね。

レストランでも、自分のところの配合で、パスタ屋に毎日作って持ってきてもらっています。アルフレッドも専門のパスタ屋がありましたから、足りなくなると追加で注文して一日に何度も持ってきていました。

一般家庭でも生パスタを買います。今は日本と一緒で、スーパーで生パスタを売っていますからね。ただ、日持ちを考えて、卵の量が少ないんです。乾麺に近いような配合のところもあります。

今は手打ちでやるのは、家族が集まったときだけでしょうね。以前にテレビで、うちで作ったんだなんて言って見せていましたけれども、ボール紙でできたパスタ屋のお皿が映っていました(笑)。

行くたびに友達と食材を仕入れに行きますが、ほとんどスーパーでそろいますよ。

日本と同じで、あまり料理しなくなっているのは、家族が少ないので、お惣菜屋で買ったほうが安く上がるんです。

昔は、長男、次男が結婚しても親と一緒に住んでいましたが、今は結婚すると、親とは別で住みますし、子どもは、いても一人です。

昔の大家族で住めるアパートは、なくなって、郊外には日本でいうワンルームマンションみたいのが、どんどんできていますね。

そういうアパートに、年を取った親が一人で住むのはあれだからと、売り払って自分の田舎に帰るとかしています。だから、今のローマ市内の人口は前より減っています。ドーナツ現象で周りの人口が増えています。ミラノでも都市部はみんなそうです。歴史地区は特に高いので、外国の商社の事務所とかになっています。

日本と変わらないです。食生活も。やはり、食べるほうにお金をかけなくなって、携帯だとかああいうのにお金をかけています。今はイタリア人も時間がないといいますけれども、パソコンとか今までやっていなかったことに時間をかけているからですね。ですから炊事や掃除にかける時間は減っています。