今月の次郎。

やはりこの時期ならではの、新イカとシンコだろう。

「ごめんね」。

歯がイカの身に食い込んだ瞬間、そう言ってしまった。

いたいけな歯応えに、危うい美があり、切ない甘みがある。

きりりと立つ酢飯の酸味が、新イカの幼さを優しく見守っている。

その兼ね合いに、胸が焦らされる。

一方シンコは、二枚づけである。

最近よく見かける、3枚づけや４枚づけは、可愛い。

だが味わいは出てこない。

しっかりと〆られたシンコは、粋を忍ばせる。

酢飯と軽やかに舞いながら、喉に落ちかかる刹那、つたないうま味と、青草のような爽やかな香りを残して消えていった。