ナスと豚肉の細切り炒め。
どこにでもある中国料理である。
何気なく食べて、カッと目を見開いた。
なんだこれは。と呟いた。
色は濃いが、どこまでも優しい。
それでいながら、ご飯が恋しくなる味の強さがある。
またそうでありながら、ナスの甘みや豚肉の滋味が、明確に伝わって来て、ありがたみが湧いてくる。
ナスはふわりと、舌の上で溶けるように崩れ、豚ヒレ肉は歯に優しく食い込んでくる。
両者が微妙な食感の違いでくんずほぐれつ、抱き合う。
ご飯に乗せて一緒に食べてみた。
ああ。
その時ご飯が、静かに笑ったような気がした。
すぐにでも簡単にできそうだが、決して近づけないだろう味である。
これこそが料理というものなのだろう、
「厲家菜」にて。