焚合はずいきだった。
揚げた粟麩とおくら、刻み柚子が合わせられる。
噛むと出汁が出るともなく出、飲み込むときに出汁の香りが立って、鼻の奥に抜けていく。
ずいき自体は味があるようななきかのような味わいであるが、本来持つえぐみは微塵もなく消え、そこにうますぎない出しが忍び込んでいる。
しゃきと裂けるずいきに粟麩のもちっとした食感が対をなし、揚げたことによるコクが料理全体の味を深くする。
味わいが淡き野菜類を、調味を濃くするのではなく、いかに味わいを深め、飽きさせないようにするか。
その精進料理の発達が日本料理を発展させてきた。
だからこそ、芋茎を一噛み一噛みに先人たちの叡智が沁みて、感謝の味となる。
「辻留」の夏の精進料理は、別項にて