「風神」と名づけられた椀を開けると、風神の袋が横たわっていた。
中に緑が霞んでいる。
汁をいただく。濃く、深い滋味が、唇をすり抜け、ゆっくりと舌に広がっていく。
「はぁ~」。たまらず口から満足のため息が漏れた。
次に淡い甘みを忍ばす真薯を食べ、風神の袋を、一口で含む。
袋はモチッとした弾力を見せながら、すぐに弾け、破れた。
瞬間、青々しい風が吹き抜ける。
木の芽が、爽やかな刺激を残して消えていった。
自然への畏敬の念がそうさせたのだろう。神話や文学では、決していいイメージを与えられていない風神だが、こうして口に宿せば、改めて春への感謝が身に染みる。
そうそう、風神の袋を作るのに、試行錯誤を繰り返したとか。
袋はアジアの食材である。
銀座「壬生」にて