数えてみれば48種類もあった。
札幌の名酒亭「こなから」の品書きである。
これをほぼすべて、ご主人小割さんが作る。
しかもどれも季節感と個性に富んでいて、酒飲みと食いしん坊のツボをちくちく刺激する。
これはいけない。とても危険である。
さらに酒の揃えもいい。燗のつけ具合もいい。
とっても危険な店なのである。
だからもう札幌の夜は「こなから」以外に行けなくなった。という人を沢山知っている。
かくいう僕もその一人である。
隣の知人夫婦は、「全メニュー制覇する!」と叫んでいる。
この後中国料理店に行くつもりだが、そんなことを今計算するつもりも無い。
タベアルキストは、「宵越しの空腹は持たない」主義なのである。
さあ頼もう。
「いいものがあるとつい買っちゃう」と、小割さんが遠くまで買い付けに行った刺身の盛り合わせに、アスパラとウドの白和え、白カブとキュウリの浅漬けをもらって、まずはスタートしよう。
酒は地元の二世古を2種類冷やでいただこうぞ。
その後は、宗玄、るみ子の酒を燗つけて。ああ、而今も後で頼むからね。
磯香が口の中でのたうつ、「鮑の岩のりあんかけ」、焼いた香りが甘い、「白アスパの焼き浸し」、身が緻密で優しく、脂がじっとり回った「時鮭焼き漬け」、胃袋つかむようなこっくりとしたうま味が溶け込んだ、「目抜けの味噌汁」。
ああ、どれも酒が進んで困っちゃう。
「海老マヨ」はなぜか衣にコーンの香りがして、マヨの塩梅がなんともいい。
さらに、立派な身がしっとりとして、品のある脂に驚く「ほっけの炭火焼き」で笑い、名物「イチジクレーズンバター」でウィスキーくれぇと叫び、「行者菜となめこと卵の辛味炒め」で、なめこの役割を褒め称える。
店名の「こなから」=「小半ら」で一合の半分の半分2合半くらいがほどよいぞと言われているのに、まったくもってとまりません。
しかし俺だって大人さ、蟹炒飯とストロングドライカレーと、久々のサバサンドに目をつむり、泣く泣く中国料理店へ向かう。
ああ、木村夫妻は食べたのかなあ?
数えてみれば48種類もあった
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