目をつぶって、思い浮かべてほしい。
新緑に輝く山々から清涼たる風が吹き降りて、豊饒の海に注ぎ込む時を。
昨夜はそんな料理に出会ったよ。
マコガレイとコシアブラ、たらの芽のお椀さ。
一口飲むと、豊かで、色っぽいマコガレイの滋味が口いっぱいに広がるんだけど、山菜の涼やかな香りが刺して、なんとも健やかな気分になるんだよ。
そこには、ただ魚と山菜を合わせたのだけでない、自然な味がある。
味わいが丸く、優しく、舌の上を転がっていくのさ。
聞けば、マコガレイの出汁と、昆布出汁にマコガレイを潜らせた時の汁と、昆布出汁に山菜を潜らせた汁の三つを合わせているという。
でもその精妙な量のバランスが、どこまでもさりげなく、天然なのさ。
だから、限りなく美しい。
僕らは、ただ飲んで、幸せのため息をつくだけさ。
やはり銀座「割烹 智映」は、どこにもない魚料理、新しい天体と出会える店だね。
閉店