サクラマス、蕪、ホタルイカ、ズワイガニ、富山葱、牡蠣、菜の花、銀杏、熊、コンカイワシ、ゲンゲ、黄かぶら、ブルーベリー、アスパラ、フキノトウ、猪、百合根、オコゼ、小矢部トマト、根菜、イチゴ、呉羽梨、山田村の林檎。
14皿の料理に、富山の春が満ちていた。
自国自慢に寄ることなく、実直に食材と向き合い、愛を交わして作り上げた料理ならではの、健やかさがある。
身が緩く、ぼやけた味ながら愛すべきゲンゲは、揚げてチップにし、周りにつけた山椒の殻の刺激が身を引き締めて、秘めた凛々しさを引き出す。
ホタルイカの胴体は茹で、足は揚げて、食感の違いを楽しませる。
オコゼは、酸味を忍ばせた黄蕪のソースと合わせ、一見たくましいこの魚の、エレガントさも教えてくれる。
そして一ヶ月以上前に往生させた猪は、まだ生命が絶たれたことを知らぬかのように、澄んだ味と香りを滴り落とす。
百合根と野菜のソースも優しく微笑み、仔猪が草を食んでいる瞬間を切り取った、自然な佇まいがある。
大阪から来た谷口英司シェフは、きっと富山に愛されている。
その嬉しさや感謝を身に宿しながら料理を作っているのだろう。
そう思わせる太い芯があった。
「L’évo」という店の名は、「進化」や「革命」を意味するのだという。
人間の進化はやはり、愛されることから始まるのだ。
14皿の料理に、富山の春が満ちていた
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