潔い。
精妙に火が通されたマナガツオには、二枚のズッキーニの薄切りがかぶさっているだけである。
ズッキーニの上には、乾燥した甘夏の皮が振り掛けられ、奥にはウニのソースが添えられる。
1枚のズッキーニはシンプルにグリルし、もう1枚は生のまま塩水に漬け込んである。
抱き合わせて食べれば、上品なマナガツオの甘みが、塩漬けズッキーニの塩味で起き上がり、方やグリルズッキーニの焼けた香りとほのやかな甘みは、マナガツオの凛々しさを引き出す。
ウニのソースは、あえてウニの主張を抑え、秘めやかな甘みをそっと出しているだけである。
それは、人間の手を加えながらも、いかに自然に近づこうかと考えた結果なのかもしれない。
食べるほどに、体が澄み渡っていく皿だった。
「なぜ、マナガツオとズッキーニを合わせたのですか?」と、シェフに聞いた。
「旬同士、合うかなあ思いました」と、彼は答え、
「できれば、マナガツオだけで構成したかったのですが」。
その言葉の奥には、「まだ僕には、そこまでの力量がありませんでした」という、自戒と闘志が込められているようだった。
そうして29歳の春田シェフは、はにかむようにして笑われた。
日本には、若き素晴らしい才能が芽生えている。
西麻布「クローニー」にて。
潔い。 精妙に
食べ歩き ,