「早くお食べ」。
鳩が湯気を上げながら、つぶらな瞳で訴える。
切られ、皿に盛られた鳩肉を見ながら、さあどれから行こうかと舌なめずり。
笹身は、どこまでもしなやかで、その優しさの中に静かな鉄分を抱えている。
抱き身は、肉汁をたっぷりとたたえながら弾け、血液の甘みを伝え来る。
どれも火加減が精妙で、鳩の生命力に富む香りに燻製香がからみ、食欲を鼓舞してくる。
北京ダックならぬ四川ダックは、「樟茶鴨(ザンチャーヤー)」という楠の葉とお茶で燻製する鴨料理で、鴨肉の鉄分と脂と燻製香が混じり合い、食べる手が止まらなくなる料理である。。
それをシェフは、鳩に変えた。
茨城の小鳩、しかもエトフェを使い、ジャスミン,レモングラス、ローリエで燻製にしたという。
それぞれの部位に最適な加熱を目指し、一旦燻製にかけてから、、様々な仕事をかけたのだという。
一噛み一噛みに、うなりながら、ヌフドパブをあわせる。
すると口の中で、鳩が生き返ったような躍動があって、血の気が上がって、鼻息が荒くなる。
命を喰らうコーフンに震えながら、喜びを体にゆっくりと満たしていく。