高知では、そりゃあもう

食べ歩き ,

高知では、そりゃあもう、どこでも鰹は食べられるが、やはり「ゆうき屋」に止めを刺す。
赤い身に歯を立てれば、もちっむちっとした歯応えで応えて、血潮ぜよとカツオが叫ぶ。
清水サバもこれまた血潮をたぎらせて、まだ脂はないが、腹身はシコシコと背側はもちもちと歯を喜ばせる。
圧倒的な命の存在感に、自らが生きている喜びを重ね合わせ、酒を飲む。
ああうれしい。
「なんかしらんが、当たるがや。その日でも当たるが、日越しは十中八九あたるがや」。というソウダガツオは、幼魚を食べる。
ロウソクくらいな大きさが食べごろで、「シンコ」と呼び、高知県人にとっては大好物らしい。
必ず柚子や仏手柑などの皮を削って散らし、さらに上から果汁を絞って醤油で食べる。
食べればねっちりと舌に絡み付きながら、あっさりとした味わいで、どこかよそよそしいが、噛んでいるとうま味が滲み出て、舌に甘えてくる。
ほほう、ここがいいのだな。
クエ科の「あかば」の刺身も、淡白ながら奥底に滋味をのぞかせる。
そして締めは三連発。
「いお寿司」は、仏手柑で味つけた酢飯と〆サバによる押し鮨である。
仏手柑のほの甘味と柔らかな酸味が生きて、こりゃ危険。普通のサバ鮨より、手が止らない。
鰻の握りは、脂がほどよく抜けて、酢飯と実に合う。
最後はやはり、「カツオ茶漬け」だな。
熱々の出汁をかけ、色が変わった頃合いで掻き込めば、出汁にカツオの滋味が溶け込んで、笑いが止まらない。
一同無言、一心不乱で食べながら、顔が「うまいぜよ」と言っている。
ああおいしかったよ、お父さん。また来るからね。
次は今日なかった、「ひめいちの芥子煮」作ってね。