豆、豆、豆

食べ歩き ,

豆、豆、豆。
豆の偉大を、豆の慈愛をこんなにみじかに感じた夜はなかった。
うっすらと甘みと青い香りを漂わせた枝豆のおからの上に置かれた白いんげん豆は、皮があるのにない。
噛めばふわりと歯が包まれて、柔らかい甘みだけが滲み出る。
木の芽の先とニンニク、トウガラシの漬物のソースにまみれた皮付きそら豆は、たくましい表情を見せてご飯を呼び、花豆、枝豆、大豆で作られた、そっくりのナマコは、ぽってりと口の中で甘味を膨らます。
剥いた緑豆は黄色く、優しい優しい甘味を広げながら、朝鮮人参の香りやハトムギ、長芋と溶けていく。
そして13種の豆の前菜。
同じ豆もあるのに、どれ一つとして同じ味と香り、食感が重ならない。
紫キャベツの汁で色付けた大豆の品や、粉状の怪味ソースで後を引く揚げそら豆。あるいは、淡い納豆臭に魅かれる水トウチや揚げグリンピースの魚香ソース。
黒豆の黒酢漬けや揚げそら豆の松茸和えや枝豆トリュフあえ、枝豆と大豆の青唐辛子あえもたまりません。
めくるめく豆の力に撃たれた、趙楊の夜。