蛤は確かにそこにいる

食べ歩き ,

蛤は確かにそこにいる。
しかし、存在しないかのようにさりげない。
「祇園川上」で、蛤のお椀が出された。
蛤を椀仕立てにすると、そのしたたかなうま味が舌を包み込む。
しかしこのお椀は、どこまでも清い。
蛤の滋味は十二分に抽出しているものの、いやらしくなく、澄み渡っている。
真のエレガントが椀の底に沈殿していて、心をくすぐり、惚れさせるのである。

「祇園川上」3月末の料理は、別コラムを参照してください