蓋を取った瞬間、白味噌の丸い香りが頬を撫でた。
白子が、誇らしげに鎮座している。
汁を一口。
「ふうっ」。
安寧がカラダの底へ、降りていく。
続いて白子の精が、てろりと甘えながら崩れゆく。
また汁を一口含み、白子も食べた。
汁の豊かさが、唇を舌を喉をいたわりながら広がって、消えかかろうという、その瞬間に白子が顔を出す。
しかしその白子は、先ほど口に含んだ白子ではない。
精の色気を薄めて、のったりと甘みを膨らませる。
味噌と出会ってよかったなあと、手足を伸ばしている。
「ああっ」。ため息、漏れた。
お疲れ様、また来年。
味噌汁からねぎらわれる。
年を締めくくるには、なんともありがたい「みな美」の夜だった。