自然と共生してきた日本人の料理だった

食べ歩き ,

自然と共生してきた日本人の料理だった。
ローストした鬼カサゴをカサゴと蛤のスープに浮かべ、二種類の食感と塩気が違う若芽を沈めて、春の豆を添える。
泡は、サルデーニャ島のシェリータイプのワイン、ヴェルナッチャ ディ オリスターノ。
海老の香り漂わせるカサゴのたくましい滋味を、柔らかな海のスープが包み込み、若芽がカサゴを潮の中へと誘い込む。
そっと滲む春の香り。
カサゴの雑味を取り除き、汚れなきうまみを引き出し、海の清らかさと抱き合わせた繊細な料理は、カサゴを海に戻して自由に泳がせていた。
そしてそこへ、ワインのナッツ香や微かな黒糖感が、純な海にほんのり艶をつける。
きっと海は、夜の帳が降りた頃なのだろう。
自由が丘「モンド」の春の皿。