カツに最初からソースをかけないのは,ソースの味に邪魔されずに豚肉の味を味わいたいということもあるが,最初のきっかけは,衣のカリカリ感を失いたくないからであった。
しかし世にはソースカツ丼という、最初から衣が染みているカツがある。
今日は,生まれて初めて「カキカツ丼」をたべた。
正確にはカ牡蠣のソースカツ丼である。
ご飯の上では、大振りのカキカツが三個,ソースにまみれてご飯の上で並んでいる。
一つを口に運ぶ。
カリッ。ザクザクッ。
目を見開いた。
ソースに浸かっているのに、衣は軽快な音を立てる。
さらに中からは、ミルキーなエキスがたらりと流れ出るではないか。
この衣の食感は、長く揚げているのだろう。
それなのに中の牡蠣は、まだ火を入れられたことを知らない。
ふっくらとした身は1ミリも縮んでおらず,豊満なカキ汁を,どうっと口に流す。
それは甘辛いソースの味と出会って,自分の居場所を知った。
そして猛烈に、ご飯を恋しくさせるのである。
これはカキフライの革命である。
いや、カキカツか。
日本橋三越前「奏す庵」にて