洋食と町中華。

食べ歩き ,

エビチリ 、ハンバーグ、麻婆豆腐、ポテサラ、棒棒鶏、蟹コロッケ、酢豚,コーンスープ、雲白肉、鳥の唐揚げ、ラーメン、プリン、杏仁豆腐。
どれも洋食と町中華の名品である。
今まで何回食べたか、わからない。
しかしこの名品同士が,匠の技と感性によって合体した時、奇跡が生まれた。
 
例えばハンバーグである。
走る豚とブラウンスイスのミンチで作った、肉肉しいハンバーグには、麻婆豆腐がかかっていた。
くどくないか? うますぎないか?
一瞬でそう思った。
だが食べて、目を開く。
麻婆豆腐は、ハンバーグの肉の香りと滋味に敬意を払い、引いていた。
噛め! 噛め!と、煽られるハンバーグから、肉汁が染み出て口を満たす。
脂が少なく、ミルクのようなほの甘い味わいがする肉のエキスが、舌を流れ。喉に落ちていく。
そこへ粗挽きにされた肉の麻婆が、ハンバーグのたくましさを持ち上げる。
一歩引いて、ハンバーグを立てる麻婆の勇気が、鼻息を荒くさせる。
そこには調和があった。共鳴があった。融和があった。
いや大地を踏みしめ牧草を食べてきたこの牛と豚で作ったハンバーグだからこそ、麻婆と渡り合えるのだろう。
そしてこの「ハンバーグ麻婆豆腐」をご飯にかけた時、禁断の至高が生まれた。
「もうやめて」と、泣きたくなる。
これぞ町中華と洋食が持つ底力なのだろう。
 
例えばエビチリである。
オマールはフライにされて目の前に置かれる。
もうそれだけで、何もいうことはない。
だがその上に、厳選されたトマトで作ったエビチリのソースがかける。
さらに、チーズが振りかけられた。
これまたやりすぎではないか、うまみ過剰ではないかと一瞬思わせる仕立てである。
しかし。
オマールブルーのフライは、品のある深い甘みを弾き、凝縮したトマトの旨味と手を取り合って、高みに登っていこうとするではないか。
チーズのうまみがその両者を、嬉しそうに持ち上げる。
数々のエビフライを食べてきたが、この陶酔はない。
食べていくうちにめくるめく恍惚が頭を巡って、一瞬気を失いそうになった。
「茶膳華」川田シェフと「洋食おがた」緒方シェフの一夜限りのコラボ会にて。
まだまだ素晴らしき料理があるので、それはまた後ほど