根津「さかなのさけ」~日本酒の美味しい居酒屋

食べ歩き ,

17年やられた大阪の居酒屋から六本木に移転し17年。2024年に根津に移転された、ご夫婦で営む店。
奥様が料理を作られ、喋りの間合いがなんともとぼけて、ユーモラスなご主人が酒担当されている。日本酒通を唸らせる銘柄の揃えも素晴らしいが、愛称「えっちゃん」と呼バレる奥様の作る料理が落ち着いて、静かで、柔らかい。六本木時代からもう20年近くいただいているが、いつも安らぎを運んでくる。食べた瞬間「おいしいっ」と、叫ばせないが、心の内で「おいしいなあ」と、呟かせる料理である。

脂が載っているが、キレがある「アジ造り」

酸味をキチッと効かせ、香りが食欲をあおる、「太刀魚南蛮漬」。煮汁の味わいが優しいが酒が恋しくなる、「さわら煮付け」。

ニョクマムの味付けの抑制具合のギリギリ感がたまらない、「甘鯛と春雨のベトナム風蒸し物」

コックリとした味わいながら、どこまでも優しい、「鶏と野菜くず煮」

揚げ具合が精妙で、皮の香ばしさが生きた、「干貝柱の春巻」

豆腐の甘みを尊重した、「名物自家製ひろうす」

様々なものが入って、大阪人の食いしん坊ぶりが出た、通称七福神の「大阪風のなます」

ナッツの穏やかな甘みと香りが、春菊の強さを優しくいなす、「春菊カシューナッツソース」。

ふっくらとして大きい、「丹波黒枝豆」。上品な味わいのつゆに、細い細い麺と鯛の切り身を合わせた、締めの「にゅうめん」

料理は、全40種類。えっちゃんは手早く待たせることなく作っていく。それらは割烹の洗練さや気取りではなく、家庭料理のざっかけさでもない、その間にある、プロの味である。食べると、仕事の汗が抜け落ち、悲しみの後の優しさを運んでくる。どうしてこの味に決められるのだろうと、いつも思う,おそらく彼女の人生の味なのであろう。

迎え撃つ酒は、久留米の独楽蔵。あと滋賀の七本槍。兵庫の純青など州数種類。どの酒も店主田中氏がそれぞれの酒を生かす燗酒に仕上げてくれる。