東京とんかつ会議56回 御徒町「とん八亭」ロースかつ定食1700円(昼)

とんかつ会議 ,

東京とんかつ会議56回
御徒町「とん八亭」ロースかつ定食1700円(昼)

<肉3、衣2、油3、キャベツ2、ソース2、御飯3、新香3、味噌汁2、特記1【ヒレ】 計21点

 上野には、とんかつ屋が似合う。「双葉」も「双葉支店」も、「平兵衛」も無くなったが、「本家ぽん多」はあるし、「蓬莱屋」や、「井泉本店」もある。
 この「とん八亭」の周囲50メートルにも、とんかつ屋が二軒あって、どの店も大いに賑わっている。
 大勢の人が行きかう広小路の脇を入った、タヌキ小路にひっそりと佇むのが「とん八亭」である。いかにも「街のとんかつ屋さん」という庶民的な風情で、創業は1947年と古い。
 三代目が守る店は、近所の旦那衆の常連が多く、私が行った時も、70代の男性が一人「よおっ」と入ってきて座ると、自動的にメニューにはないウィスキーの水割りセットが運ばれた。こんなことが似合うとんかつ屋は、上野にしかないのではなかろうか。
 今とんかつ屋は、女子にも人気で、この会議に登場する店に行くと、若い女子率が多いことに驚く。しかしこの店は違う。お客さんは男性ばかり、それも80%がおじさんである。こんなところも、上野はとんかつ屋が似合う街だなあと思うゆえんである。
 肉は肉叩きで叩いてから衣をつけて揚げる。あれだけ叩いて大丈夫だろうかと思うほどだが、肉は十分に肉汁を含んでしっとりとしている。ブランド肉と比べると、肉のうま味の濃さはやや譲るものの、脂肪の溶け具合といい、おいしいとんかつである。
 揚げ油は低温で、じっくりと揚げるので、衣の色は薄い。低温ながら、油切れはよく、ラードの香りが食欲をそそる。ただし揚げすぎなのだろう。衣が一部剥がれてしまい、食べている終盤には火が入りすぎて、食感のしっとりさが失われてしまう。また、揚げてすぐキャベツに置くので、下側となった衣が、かなり湿気ってしまっているのが残念である。ただし1700円で、この肉の質と厚さがいただけるのは、都内でもそうはない。
 キャベツは極細切りで上等。ご飯も甘くて炊き具合よく、大根、白菜、人参、キャベツによる新香も、質が高い。味噌汁は豆腐と三つ葉、豚肉が一片入った、とん汁風、ソースは甘めである。
 「ヒレかつ」2000円は、肉の香りがあってこれまたお値打。隣のかたが食べていたサービスランチは、700円。当然肉は薄くなるが、長く揚げない分、こちらの方が衣と一体感があるようで、すぐにでも裏を返したくなった。