小浜で素晴らしきイタリアンに出会った。

食べ歩き ,

小浜で、素晴らしきイタリアンに出会った。
田んぼに舞い降りた鴨は、血な味を滴らせながら、舌に根をおろす。
かぼちゃは、野暮ったい姿がどこにもなく、海の滋養と抱き合いながら自らの養分を誇らしげに歌う。
コシヒカリは、自家製バターの甘みを受け止めながら、たおやかに笑う。
どこまでもきめ細やかな里芋は、自家製スカルモッツアを抱き込んで、心を温める。
大四郎柿は、包容力のある甘さで、完熟梅の酸味と舞う。
ツバスのカマは、清らかな脂の味をパスタに忍ばせて、フォークを持つ手を止まらせない。

すべての皿に小浜があった。
小浜の豊かな土と海と水と空があった。
かぼちゃのスープの感動を伝えると、
「カボチャの畑から海が見えるので、牛乳で伸ばさずに、あさりのジュで伸ばしました。するとかぼちゃのミネラルが締まりました」と、嬉しそうにシェフが話す。
地元酪農家が誇る牛乳で作ったチーズとバター、おばあちゃんが持ってくる梅干に柿、サトイモや銀杏、イチジクにコシヒカリ、ツバスに鴨、山で採ったクレソンに生で食べられる椎茸、人参の葉やアサリ。
なによりも土地の恵みを愛し、頭をひねりながら単純に料理をし、大いに食べ飲む。
そんなイタリア料理の精神を、この店はまさに受け継いでいる。

青森「サスィーノ」。 函館「コルツ」。和歌山「アイーダ」。鶴岡「アルケッチャーノ」。、岡山「ACCA」、富山「ひまわり食堂」、鹿児島「CAINOYA」、そして小浜「ラ・ヴェリタ」。
全国、世界中から選りすぐった食材を駆使した都会のリストランテや、本場以上に本場の味を再現しているリストランテも素敵である。
だが地方のイタリアンには、客が美味しい料理を食べその対価を払う、その行為に見えてくる景色が違う。それぞれの土地の生産者の未来が、はっきりと見えてくる。

1イチジクとph値を下げてストラッキーノのように作った自家製リコッタに、ビスケッタ。

2里芋と人参の葉と、間伐材で燻した自家製スカルモッツァ・アフミカータのコロッケ

3地元山本さんのトマトと自家製モッツアレッラ。

4ツバスのカマとパン粉のパスタ

5自家製バター 玉ねぎのソテーをのせたフォッカッチャ

6福井産コシヒカリ(コシヒカリは福井が原産)と自家製バター、銀杏のリゾット。トリュフ

7サツマイモとあさりのズッパ

8ワインの搾りかすのぶどうでマリネした鴨のソテー。完熟梅のソース、クレソン炒め、生の椎茸

9自家製ロビオラチーズ

10大四郎柿のジェラートと完熟梅のソース。

11自家製リコッタのマスカルポーネとジェラート。

杉崎シェフとサービススタッフ、ジェノバから手伝いに来たロレンツォ