味噌汁を飲んで、鳥肌が立ったのは久しぶりである。
「夏に飲む味噌汁をと家元から言われて、「和幸」の旦那が家元と一緒に考えられたお味噌汁になります」。
一見、普通の赤だしのようである。
しかし一口すすって、目を見張った。
うまみが深い。
深いが、地平線の彼方まで澄んでいる。
味噌の重みが微塵もなく、軽やかに舞う。
味噌汁は、水のようにさらさらと舌を流れ、香りを膨らませながら、喉に落ちていく。
後には、しみじみとしたうま味が居座り、心を温める。
これは赤だしのコンソメである。
猛暑に飲めば、体に力がみなぎろう。
熱い汁ながら、体に涼を呼びこもう。
昆布だしに小さくした味噌玉を数個入れ、90度までゆっくりと加熱する。
味噌は溶かない。
そして鰹節を入れて落ち着かせ、漉さずに、上澄みだけを温めた味噌汁である。
それはさらりとしていながら、味噌の精髄が凝縮して、我々に明日を生きる勇気を与えるのだ。
四谷」「大原」にて。