変態海鮮丼である。
見た目は、他の海鮮丼と変わりがないように思う。
いや、アボカドや人参細切りが控え、よくよく見れば生ハム細切りやカマンベールのようなチーズも乗っている・
しかしこの海鮮丼の変態ぶりは、それだけではなかった。
魚をどけると、下から黄色いご飯が出てきたのである。
黄色い酢飯は、ターメリックと赤ワインヴィネガーだという。
今まで誰がこれを考えただろうか。
いや掛川シェフという変態だからこそ、考えたのだろう。
食べれば、酸味が丸く優しい、おいしい酢飯ではないか。
だが噛んでいくと、向こうからインド人が歩いて去っていく。
初めての体験であるが、どこか懐かしい。
山葵醬油に浸けた白身魚もホタテにも合う。
そして生ハムにもチーズにも合う。
日印仏の架け橋である。
日本人とフランス人が結婚して、インドのゴア海岸で作った海鮮丼のような風情のようでもあり、フランスとインドに憧れた日本人が、明治時代に考え出しましたと言っても信じてしまいそうな感もある。
まったく違和感がなく、まるで昔から日本にあったように馴染んでいる。
二口三口と食べ進むうちに、箸が加速していく。
さらに困ったことには、三分の一ほど食べると、生姜を入れた鶏スープをかけてくれるのである。
これが不思議で、酢辣湯のような味わいに変化する。
思わずハハハと笑い出し、一気呵成にかき込んでしまう。
提供がランチだけでよかった。
もし夜にあったら、シメ海鮮丼しちゃうもんね。
虎ノ門横丁「ata虎ノ門」の昼限定メニュー。パクチートッピングしてもおいしいよ