そして特別に南京の食通の方が、金陵飯店」から塩水鴨と南京ダック、切干し大根餅を持ち込んでくれた。
ああ、一口食べて顔が崩れる。
南京の人は死ぬほど、ダックが好きなのだという。
そんなダック好きが、一度食べて欲しいと、南京一の鴨料理を持ち込んだのである。
塩水鴨は、しっとりとして、なにより塩加減がいい
塩味かはっきりと染み込んでいるのだが強くもなく弱くもなく、絶妙な境界線が鴨の鉄分を盛り上げている。
前歯で噛み、奥歯で噛み、再び前歯に戻していじいじと噛んでいると、しみじみとした幸せがせり上がってくる。
煮て干して8回繰り返し 皮と身の間にあまり脂ない鴨を選ぶのだという。
一方南京ダックである。
ダックといえば北京ダックが有名だが、あれは明の時代に、南京から伝わって変化したものらしい。
南京ダックは、焼くのは北京ダックと同じだが 、密閉状態の釜で焼くため、皮はパリッとはさせない。
そして焼き上がった鴨に、甘辛いタレをかける。
これがたまらないんですね。
濃く甘いが、しつこくない。
それが鴨の皮下脂の甘みと共鳴するのである。
モモが好きな人、胸が好きな人と、南京の人でも別れるらしいが、僕は胸がいいと叫んだ。
腿は赤身のしっかりした味わいがあって、少し固い。
一方胸は、肉がしっとりして、皮の脂とのコントラストが妙にエロいのである。