どちらの精にもおぼれたい。

食べ歩き ,

卵はそう。
温かみを内包しながら、てろりと舌に甘えてくる。
ミソはそう。
危うい秘密を隠しながら、とろりと口の中を埋めつくす。
上海蟹の卵とミソが、官能を撫でる。
どちらも妖しい色気を放つのだが、卵は穏やかなる精を含んで安寧に導き、ミソは奔放な精の勢いで翻弄する。
どちらの精にもおぼれたい。
無口になって、一心不乱に甲羅を舐めつくしながら、脳を溶かしたい。
上海「蟹王府」にて