土佐山の清澄な空気と緑香に、清流の音色が響く。
ここは高知市内から車で30分ほど走った、山の奥である。
緑が生い茂る。清流がほとばしる。
高知の良さの一つは、こうして街中からわずか走っただけで、民家もなき自然に囲まれることにある。
「オーベルジュ土佐山」は、そんな山中で、ぽつねんと佇んでいる。
部屋はすべて渓谷を望み、入室しただけで自然の只中へと投げ出される。
清流の音に包まれた露天風呂に浸かり、湯上りにはテラスに出て、ジントニックをすすった。
冷たい酒が喉を降りていく。
体に、ゆっくりと精気が戻ってくる。
時間が緩み、都会の垢がはらりと落ちていく。
1時間も経っただろうか。数時間すぎた気がする。
さあダイニングに移動して、夕ご飯を食べよう。
緑を望むダイニングでは、赤いジュースが待ち構えていた。
「桃太郎フルーツトマトいごてつソルティ」である。
完全天日干し塩いごてつの塩分が、熟したトマトの甘みを持ち上げる。
高知が誇る食材をまず最初にのんで、舌を喉を清める。
粋な食事のスタートである。
チャンバラ貝、室戸西山大地のゴールドラッシュ、苺、カツオのたたき、窪川米豚、近隣で獲れた野菜類など、高知の恵みが並ぶ。
中でも、ナスとズッキーニ、モロコインゲン、新玉ねぎとかボツアの天ぷらが良かった。
からりと揚げられた衣の中から、野菜の甘みが弾ける。
そして最後の締めは、卵かけごはんである。
天日干し黄金錦という土佐山中切の香り米に、土佐ジローの卵、宗田節醤油という布陣が並ぶ。
艶々と輝くごはんに卵をかける。塩を振り、宗田節醤油を
数的たらす。
ああ、卵が美しい。
黄身の味わいに品があり、ごはんの甘みと抱き合って、ふくよかな甘みが膨らんでいく。
思わず、お代わりをしてしまった。