六本木の「すきやばし次郎」で、長年修行された、水上さんが独立されて4月に出した店である。
なによりコハダが素晴らしい。
近年若手が開店した寿司屋のコハダと違い、きっちりと締めてあり、握り寿司におけるコハダの正当なおいしさを受け継いでいる。
食べた瞬間に酢飯と抱き合って、喉がキュッと鳴るような、コハダならではの握りが楽しめる。
アワビは六本木流のやり方で、やや温めた状態で出され、香りが膨らむ。
またアジやカツオは、おろし生姜を魚の上に乗せるのではなく、わさび同様に魚と酢飯の間にかますという、技術的に難しいことも難なくこなし、魚を生かしている。
酢飯の大きさは、本店や六本木店と違って小さめ、酢や塩の塩梅も淡目に仕立ててあるが、名もなき新店としては、こちらの方が正解だろう。
本店や六本木店と違うのは、キスの昆布〆やキンメの昆布〆、ほっき貝の炙りなどが握られるところである。
昆布締めの両者が素晴らしい。
キスもキンメも魚の特性を生かした昆布を使い、ジャストの締め方となって、しなやかな身に旨味がそっと忍び寄り、品が良い。
またシャコは煮るのではなく、焼きシャコの殻をむいて握る。
これまた新しい仕事で、甲殻類が焼けた香ばしさを伴う、新たなおいしさを呼んでいる。
いかにも誠実な水上さんの握る姿も美しい。
鮨みずかみ
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