マッキー牧元が選ぶ「東京駅で買える弁当ベスト5」

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マッキー牧元が選ぶ「東京駅で買える弁当ベスト5」

東京駅で駅弁を買い、列車に乗る。それは僕にとっては、毎回が「勝負」である。
なにしろここは、日本で一番多く駅弁が集結している場所なのである。構内「祭」だけでも200種、周囲を合わせれば約400種類の弁当が売られているという。
駅弁選びを楽しむコツはいくつかあるが、まず最も大切なことは、発車間際には行かないということにある。せめて40分は、余裕を見たい。

次に、どこで駅弁を売っているかを抑えておくことである。改札内では、「駅弁屋 祭」と「踊」、地下グランスタ、京葉ストリートや「銘店弁当膳まい 南通路店」、ecute東京、「紀伊国屋」など、各場所には、そこでしか売っていない駅弁がある。
改札外では、大丸地下食品売り場、黒塀横丁、グランアージュ、キッチンストリート、グランルーフと、それぞれに弁当も扱う店がある。
初心者ならまず「駅弁屋 祭」を目指そう。といっても200種もあるので、迷うに迷う。そこでこれから向かう、旅先方面の弁当を買うのである。
東北、東海、北陸、中国地方など各地方の駅弁を買って、旅先の光景を想像しながら旅情を盛り上げる。間違っても違う地方の駅弁を買って、台無しにしてはいけない。

次に、人気の定番駅弁を覚えておくことである。現在「駅弁屋 祭」での人気は、福島郡山の「海苔弁」、「東京弁当」、北海道厚岸の「かきめし」、山形・米沢の「牛肉どまん中」、新潟・新「えび千両ちらし」、西明石「ひっぱりだこ飯」、岩手・一ノ関の「平泉うにご飯」といったラインナップである。
どれも間違いない。迷ったらこれらを選ぶといいだろう。

一通り試したら、次段階へ進みたい。では上級者への道としての、僕のオススメベスト5をご紹介したい。

全弁当を制覇したわけではないが、今まで、400種近くは食べ、毎回食べるたびに、点数をつける。ご飯、おかず、価格、箸(適正な長さか)が、0点から2点、個性もしくは郷土色と特記事項が各0点から1点で、最高点が10点満点という、採点方法である。

 

5位『お母ちゃんの愛情弁当 新潟米膳』

こうして選んだ、第5位は、新潟の「お母ちゃんの愛情弁当  新潟米膳」である。この弁当、ご飯がとにかくおいしい。柔らかめに炊かれたご飯は、甘く、口の中を幸せで満たしてくれる。
焼き鮭の質も高く、おかず類も申し分ない。5種類の惣菜がギッシリと詰まっていて、それらを頬張りながら、美味しいご飯を食べる。何かほのぼのとした温かい気分を呼ぶ、弁当である。

 

第4位『とろ~り煮穴子めし』

第4位は、広島の「とろ~り煮穴子めし」をあげたい。一尾分の穴子の白煮が、カットされて、アナゴの出汁の炊き込みご飯の上に乗っている。
実はこの「とろ~り煮穴子めし」は、東京駅限定である。なにより白煮にタレをかけて食べる行為がいい。自分で弁当を完成させる点がいいではないか。
穴子は柔らかく、頭に近い分厚い部分や、尻尾部分の味濃い部分などを、楽しみながらご飯を掻き混むのである。

 

第3位『常陸牛 牛べん』

第3位は、茨城の「常陸牛 牛べん」をあげたい。東京駅で売る肉系弁当の数は150 種以上と言われているが、その8割を試した結果、この駅弁に落ち着いた。
茨城県常陸牛振興協会が認定した黒毛和牛を使用して、すき焼き風の甘辛い割り下で味をつけた牛肉と玉ねぎがご飯の上に乗っている。付け合わせの煮卵、湯葉の高野豆腐巻きも洒落ている。

何より牛肉がいい。厚さがほどよく、牛の香りがあり、柔らかい。牛の香りがあって、味付けも濃すぎない。そこには、米沢牛への敬意があり、弁当しての分と意味をわきまえた、食べ手に優しい牛弁である。そして名前もいい。シンプルさの中に俺は牛で行くぜ、という潔さがある。

 

 

第2位 「鶏めし弁当」

第2位は、高崎の名駅弁「鶏めし弁当」である。甘辛く煮た鶏そぼろに海苔ご飯、コールドチキン、鶏モモ照り焼き、舞茸入り鶏団子と、その名にふさわしい、鶏肉愛に満ちた弁当である。
僕はこの愛に応えるべく、蓋を開けると、「鶏そぼろ、ひとかけらとも無駄にはしません」と、唱えながら弁当と対峙する。鶏そぼろは、甘辛さが程よくて、食欲が掻き立てられ、いつ食べてもしみじみうまいなあと思わせる、普遍不断の力がある。

鶏そぼろ系弁当は、名古屋や博多も有名だが、この「たかべん」が一歩抜きん出ている。長い間庶民に愛されてきた鶏そぼろ弁当を代表する駅弁として、2位に推したい。

第1位『おいしい海苔弁当、鮭かま塩焼弁当』

えある1位は、グランスタ「てとて」の「おいしい海苔弁当」か「鮭かま塩焼弁当」である。魚介を90年間手がける老舗「味の浜藤」の弁当だけに、魚の質が極めて質が高い。
「おいしい海苔弁当」は、「浜藤」製の脂がのった立派な紅鮭の塩焼きに、青海苔が混ざった「山形屋」の青とび海苔、香り高い「にんべん」の削り節という、東京が誇る名店三店が、弁当の中でがっぷり四つに組んでいる。それだけで十分ながら、玉子焼きや野菜の煮物といった脇役陣も素晴らしく、一点のくもりもなき、名弁当である。
さらには、合成保存料、合成着色料、化学調味料を一切使用せず、魚はどの弁当も分厚い切り身で入って、魚自体の味がしっかりと舌に乗る。この価格でこれだけ上質な魚を使っている弁当はない。
また弁当という性格上、保存性を考え、どうしても味を濃くしがちだが、この店の弁当は、的確な調味で素材を活かしている。
そして野菜がおいしい。煮野菜が柔らかすぎず、本来の歯応えと香りを楽しめる。弁当の基本であるご飯もおいしい。というように、非の打ち所のない最強弁当である。