僕たちはコハダのなにを知っていたのだろう。なにを愛していたのだろう?
「智映」のコハダづくしで考えさせられた。
背越しから始まり、産地違いの酢〆食べ比べ、そして握りで締めた7皿の料理は、この魚のしぶとさと深みを、伝えてくれた。
「個性の強い魚は、いろいろ手を加えてはいけない。シンプルな仕事が向いている」と智映さんは言って、驚きの7皿が次々と登場した。
「焼き漬け」は、焼いたコハダを15分酢に浸け、1日冷蔵庫で冷やしたものである。
切れ目からむしるように食べれば、小肌のうま味だけが凝縮している。
噛みしめる喜びがあって、噛みしめても噛みしめてもうま味が滲み出る。
干物のように、魚の余分な水分が抜け、熟成によってうま味成分が増えた味である。
少しの身だけで舌をあおり、酒が恋しくなる。
また肝の部分がいいんだな。コイツを口に入れ、ほのかな苦味を楽しみながら燗酒を流し込む。
コハダの身と酒を、一緒に噛みしめる。
たまりません。
この一匹で、一晩中楽しめます。
この後に出た、「塩コハダ」や「船場汁風」、「塩締め辛子醤油」、「産地食べ比べ」の話はいずれ。
僕たちはコハダのなにを知っていたのだろう
食べ歩き ,