広くゆとりのある客席、広々としたバー、ウィットに富んだ颯爽たるサービス、客を和ませながら、的確な助言を授けるソムリエと、店内はいつも華やいでいて、堂々たるグランメゾンの風格が漂っている。
料理はボキューズのスペシャリテに混じって。冒険心みなぎる市川シェフの料理が生き生きと躍動している。例えば、前菜の鴨もも肉のコンフィの盛り付けは、簡素に大中小の3つの立方体。大はパリパリに焼いた鴨皮で5辺を囲んだコンフィ、中は香草を効かせたトマトのコンフィ、小は酸味の効いたピクルスとケイパー。合わせて食べればコンフィとしての魅力はそのままに、警戒感や洒脱さを盛り込んだ前菜らしい一皿になっている。
あるいは、長時間コンソメで煮含めた聖護院かぶらの薄切りに包まれたハタのポワレは、柔らかな滋味を滲ませるかぶらとコンソメのソースが、魚の甘味を優しく引き立てる。
その他、骨ごと豪快に筒切りにしたヒラメに、オゼイユソース合わせた皿など、上質な素材を豪胆に駆使した独創的な料理である。
そんな市川シェフの尖鋭とボキューズの古典、対照的な料理が共存し、協奏するスリリングなレストランである。
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