曙橋 「敦煌」

トマト卵炒め

食べ歩き ,

「トマト卵炒め」という中国料理がある。
「番茄炒蛋」とか「西紅柿炒鶏蛋」と書かれる料理で、中国ではポピュラーな家庭料理だという。
僕が作る場合は、トマトを少しだけスープを入れて炒めて、別の鍋でふんわり炒めた卵と炒め合わせます。
葱を入れるところが多いですが、トマトと卵の蜜月関係には不必要だと思うので、僕は入れません。
さて。
「敦煌」の「トマト卵炒め」は、こんな具合である。
写真では見えないが、ふわふわに炒めた卵の上に、湯むきトマトのソースがかけられている。
トマトと卵の味わいが混ざり合った従来の料理もいいが、これはたまらない。
優しい卵の甘みに、トマトの自然なうま味が寄り添って、うっとりとさせる。
卵の膨らみも、トマトの煮詰め方も、全体の塩気も、これ以上でも以下でもない、精妙な一点で極められて、唸り、笑い出してしまう。
やはり市原さんの料理は、彼だけの枯淡の味がある。
惜しむらくは、店を閉じるまで予約が満席で、もう一生食べられないことだ。