春のビリヤニは、白魚と蛤だった。
三年寝かせたというバスマティライスは、余分な水分が抜けて、米自体のうまみが膨らみ、そこにハマグリのだしが染み込んで、しみじみとしたうまさをつのらせる。
白魚は、淡い甘みをそっと滲ませ、米と蛤の出会いを邪魔せぬよう、そっと味わいを深めていく。
あまつさえ春菊の青い香りと微かな苦味が、春への想いを膨らませる。
季節を生かした淡味は、日本料理のようでもある。
だが、添えられたライタ、カレー、ダルカレーをそれぞれかけると、様々な表情が生まれ、スプーン持つ手が止まらなくなってしまう。
特にダルカレーがいい。
デミグラスに似たうま味の凝縮があって、ビリヤニへの勢いが増す。
おこげのところへかければ、香ばしさとうま味が掛け合い、鼻息が荒くなる。
ああ、すいません。お代わりをください。
銀座「スパイスラボトーキョー」にて。