ゴリはしぶとい。
小さき体なのに、甘辛い味付けなのに、揚げてから煮られるという、激しい逆境を経てきているのに、まだ自分の味を保持している。
甘辛い味の奥から、旨味のような苦味のような複雑な味が滲み出してくる。
それは前歯で噛んでいてはいけない。
奥歯でじっくりと噛みしめていると、正体を現すのである。
この味のしぶとさは、胸ビレというか腹の吸盤で岩に吸い付き、早瀬に流されまいとする根性から生まれるものか。
その小さな小さな一匹をつまんで食べるのだが、いつまでも滋味が残って酒を呼ぶ。
魯山人は、食通はゴリの佃煮を使った茶漬けを、「茶漬けの王者」として珍重していると書いて、彼自身も好物だったようだが、当時から高価なものであったらしい。
「5年ぶりに入れることができました」と、祇園川上の加藤さんは言われた。隣の老人は、「いやあ久しぶりだなあ。美味しいなあ」と、子供のように喜ばれていた。
こんなしぶとい味を持つ魚でも、河川環境の変化によって、希少なものになってしまった。
琵琶湖産より細く小さい美山産だというが、なかなかどうして、一匹一匹に味わいの深みがある。
ゴリはしぶとい
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