<駅弁勝負> 第61番     

駅弁 ,

弁当勝負第55回
今回は負けを覚悟した。
前席の20代後半の女性は「シウマイ弁当」である。
ストロングゼロを二本飲みながら、黙々と食べているツワモノである。
しかも食べ方が、実に綺麗であった。
ご飯とおかずを均等に食べ進んでいる。シウマイの食べ方も美しい。
対するこちらは初めて食べる、日本橋大増の「江戸日本橋弁当」である。
部が悪い。
値段も1200円と、シウマイ弁当に比べれば500円近く高い。
だが食べ始めてみるとこれが、充実しているのであった。
野菜の煮物は、江戸風の甘辛煮で、それぞれの香りが生きている。
鯖味噌煮も合鴨も滋味が感じられて、十分に美味しい。
シソ入り野菜酢和えというのが粋で、味の押さえ方よく、口を清める。
さらに唸ったのは海老煮であった。
元々駅弁に入っている海老は嫌いである。
皮を剥こうとすると、手が汚れて、食べるリズムが崩れる。
さらに食べれば、はるか昔は海老だったんだろうなというお味である。
しかしこの海老は身の部分だけ皮が剥いてある。食べればしっとりとして、海老本来の香りがある。
40数年に及ぶ駅弁経験で、こんな海老煮には出会ったことがない。
他のおかずも申し分なく、非の打ち所がない。
久々のヒットである。
これなら東京駅購入駅弁の、新たなベスト5入りでもおかしくない。
うむ、シウマイ弁当に負けてかと思ったが、これは勝ちか。
嬉しい伏兵であった。