オジサンたちは、お腹いっぱいでも「フライ」と聞くと、抑制が効かなくなる。見境がなくなる。
この日も絶妙なタイミングで出される小皿料理に、何杯盃を空けたのだろう。
枝豆、パプリカのスープ、生鳥貝を初めとしたお造り、のれそれ、鯨ベーコン、筑前煮、ノドグロの一夜干し他、後5皿は行ったはずである。
そしてその後のフライ。
とっても危険なフライ。
活きた車エビをむいてのしたフライ。
薄赤色の姿態を見せつけて、誘いくるビフカツ。
ふぐの白子のフライ。
海老は口いっぱいに甘い香りを放って、顔を子供に変え、ビフカツは、優しい肉汁と猛々しい肉の香りを流し込んで、むむうっと言葉にならない呻きを上げさせる。
そして白子のフライは、サクッと衣が弾けた瞬間、甘いエロスがトロリと溶けて流れ、心を陥落させる。
一即多にて。
オジサンたちは、お腹いっぱいでも
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