口に入れると、時間がぬかるんだ。
頭に染み渡ると、ゆらゆらうつつが包まれた。
どぅるわかしーである。
素朴な芋の甘みと豚脂の甘い香り、味噌の甘みが溶け合って、舌を舐め、上顎をさすり、喉へと落ちていく。
時折、蒲鉾と椎茸が、顔を出す。
沖縄の人でもないのに、子供の頃に食べたような記憶が立ち上がって、心が温まる。
突然おばあちゃんの顔が浮かんだ。
懸命に、美味しそうに、一心に食べる孫の姿を見ながら、微笑んでいる。
これが田芋の誠実なのだろうか?
どぅるわかしーは、何回か食べたことがあるが、こんな妄想が浮かんだことはない。
そこへ30年もののクースーを流し込めば、さらに時間は緩み、あたりの空気は柔らかくなって、夜はゆっくりと歩んでいった。
石垣島「辺銀食堂」の料理は別コラムを参照してください