やはり日本一の定食屋である。
博多にあって、半年ぶりに訪れたのに、親父は僕がいつもご飯少なめに頼むのを覚えていて、「ご飯少なめでいい?」と聞いてくれる。
制服を着た女子高校生と、おめかしした両親が現れたのを見て、「おや? 今日は入学式?」と聞く。そして「おめでとう」と言う。
しばらくしてその親子の元には、頼んでいない「玉子焼き」が運ばれた。
びっくりして親父を見ると、「ささやかな入学祝い。おめでとう」。
にっこりして親子で玉子焼きを突く姿が微笑ましい。
定食屋は、美味しいだけではいけない。
心の交流がおいしさをふくらます。
一見むっつりしていて、とっつきにくそうだが、実は話好きで、僕が一人で入って来て、相席のテーブル席に座るのを見ると、従業員に指示して、カウンターのしかも自分が一番話しやすい席を空けて移ってもらうように指示している。
「うちは高い魚の方がお得だよ」と、いつも親父が言うので「赤ハタの煮付け」を注文し、もちろんそれでは終わりません。
きんぴら、ほうれん草おひたし、玉子焼きハーフ、冷奴、それにビールを注文して、昼なのに定食屋で大人買い、一人で3500円も食べてしまいました。
「博多に来たらつい食べとうなって、食べすぎちゃいました」と、おばさんに言うと、
「いやこないだなんて、女性がせっかく行きたのだからと、煮付けと塩焼き頼まれました」と嬉しそう。
魚の数は数十種、焼き魚も煮魚も注文されてから調理され、質も極めて高く、ご飯も味噌汁も美味しい、日本一の定食屋なのだが、謎はなぜこの店が、ギャル御用達の洋服屋が並ぶ、109のようなファッションビルにあるのかということである。
やはり日本一の定食屋である
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