まながつおは生きている。

食べ歩き ,

まながつおは生きている。
半世紀経ち、銀の輝きが沈んだ魯山人の銀彩皿とともに、呼吸をしている。
魚も皿も、人の手がかけられているのに、それらは人間から離れて、限りなき自然の中にいる。
箸をそっと入れた。
甘い湯気が上った。
「食べて」。
魚が耳元で囁く。
噛む。
たくましくも優しき味が、細胞に染み渡る滋味が、心を静かに座らせる。
辻留にて。