高円寺 鮨時成

こういう仕事が好きだなあ。

食べ歩き ,

こういう仕事が好きだなあ。
子持ちヤリイカの煮イカの握りである。
江戸前握りの常連であった煮イカは、最近とんと見なくなった。
地味で受けないからだろうか。
しかし煮たイカには、生のイカとは違う食感と甘みがあって、それが酢飯と合一する。
煮ツメをひいたそいつを口に放り込めば、笑いが出る。
こういう仕事が好きだなあ。
煮蛤の煮汁ジュレ乗せである。
トモヅメを引いてくれるのもいいけれど、蛤の滋味が滲み出たジュレと蛤を噛み締めると、貝の体液が戻っていくような感覚があって、少しいやらしい。
これまた酢飯とピタリと馴染んで、喉に落ちていく。
こういう仕事が好きだなあ。
かすごのおぼろを噛ませた握り。
淡いかすごに甘さが忍び寄って、味を膨らます。
春の握りという風情が、幸せを運んできた。
高円寺「鮨時成」にて