一口飲んで、心が解けた。
二口飲んで、体が弛緩していく。
「ああこれはお母さんが作ってくれたスープに似ている」。
同席した台湾出身の女性はそう言って、優しい目で遠くを見つめた。
日本にはたくさんの中国料理店がある。
しかしなぜこのような料理がないのだろう。
番茄牛尾汤 牛テールとトマトのスープである。
トマトが入っているが、味が出すぎていない。
トマトと牛テールの滋味が、丸く、穏やかに抱き合って、僕らの細胞に染み渡っていく。
養分を察知した本能が、喜んでいる声が聞こえる。
液体が舌をすぎ、喉に落ちると、甘いスパイスの香りが余韻となって、ゆっくり鼻腔へ抜けていく。
牛テールとシナモン、クローブなどを合わせて4時間蒸し、トマトと合わせて3時間蒸したスープだという。
小山内さん、早田さん、西岡さん、これ作ってください。
趙楊にて。