松茸の真実を知る。
「柚木元」の秋は、そのためにある。
だがその前に出される前菜が素晴らしい。
一つ一つが秋の深さを感じさせ、これから始まる時間への気持ちを高ぶらせる。
△アケビ。
刻んで半日水に晒してアク抜き揚げたアケビの皮に、裏漉しした果肉のソースを和えたもの。
サクサクと軽快なクァの食感とソースのりんごジャムのような甘酸味が、食欲を刺激する。
△天竜鮎の子持ちタレ焼きが自家製栗の渋皮煮を枕にして、泳ぐ。
小さいながら濃い卵の味と甘辛いタレとの出会いが、酒を呼ぶ
極力砂糖を使わずに仕上げた渋皮煮の栗の甘みが優しく、心を和ませる。。
△黒皮キノコとおろし醤油。
サクサクとした食感のキノコで、ほのかな苦味がある。
△アミタケの塩とごま油あえ。
加熱すると紫色に変色し、姿がレバーに似ているので塩とごま油であえてという。
味はほとんどないが、魅力のぬめり感をごま油が膨らましている
△天然舞茸の南蛮漬け。
コリコリとした歯ごたえと酸味に、心が弾む。
△しょうげんじと信州牛煮
シコシコとしたしょうげんじ茸と牛肉の甘辛煮。
△コボ(子松茸の味噌漬け)。
これが前菜の主役だろう。
小さな小さな、決して市場には出回らない松茸の間引きの味噌漬けである。
これが出てくると松茸の季節がやってきたと、ざわつくのだという。
加熱をしないので、鮮度が良くないとこの料理にはできない。
口を開けた途端に香りが流入し、噛めば、クリクリッと弾みながら、純な香りで口中が満たされる